2015年12月30日

2015年作品鑑賞ベスト 文芸作品編

再びこんにちは、外都ユウマです。2015年のイチオシ作品鑑賞文、「文芸作品編」です。
今年新規で読んだ冊数は58冊。昨年より少ないですが、再読しているものもあるので読書量としては昨年以上になりました。昨年いろいろはまりすぎたんだなあ……。
それでは「2015年に楽しんだ作品」から8作紹介させていただきます。著者敬称略につき、ご了承ください。


『小さいおうち』(中島京子)
昭和を生き抜いた女中タキが綴る、奥さまとの日々。目まぐるしく流れるこの時代の中で、二人の関係は何ものにも侵されない神聖な領域でした。
主人公タキをはじめとする登場人物たちの心境を解釈するのに、またこの昭和という時代を庶民の目線から見るのに、随分と考えを巡らせながら読んだ作品です。私の解釈と映画とはだいぶ異なるものでした。
「世間は何やら動いている」のにその詳細がわからなかったり、いつのまにか大きい方が正しいものになっていたりするのは、いつの世も同じだなあと思わされる場面もありました。『女中譚』もおすすめ。

『ゆかし妖し』(堀川アサコ)
『闇鏡』の改題作。時代物でありミステリーであり怪奇物でもある、いくつものジャンルを一作のうちに楽しめる堀川ワールドはここからすでに始まっていたのだと思わされました。
時は鎌倉、検非違使清原龍雪が、同時に発生した奇怪な事件に挑みます。一見ばらばらのような事象が一つに繋がる瞬間が、ミステリーを読むにあたって最も爽快な気分を味わえる時ではないでしょうか。随所にちりばめられた「怪奇」は、人間の起こす「事件」となってあらわれます。
ラストの怒涛の展開にぞくぞくさせられ、それがまた気持ちいい。頭の中に広がるその場面が、あまりにも恐ろしく鮮やかで美しい。
ちゃんと勉強して本を読むとなお一層面白いのだということを教えてくれた作品でもあります。

『コンビニたそがれ堂 神無月のころ』(村山早紀)
いつもの「たそがれ堂」とは少し違う、看板娘ねここが見つめる物語。全編、遠慮なく涙を流させていただきました。「あちら側」の要素が強めになっても、「お別れの物語」という柱は変わらず。切なく、かつ温かく紡がれる物語に、何度も涙腺が刺激されます。
こちら側の者は「残しておく」、あちら側の者は「見守り続ける」という、終わらない物語がじんわりと沁みていきます。『花咲家の旅』と姉妹編として読めるところも素敵。「あたりまえ」はあたりまえではないのだなあと、感じさせられるお話です。
おすすめの理由は私が大好きなねここが出てくるから、というのが大きいですね。彼女もまた、見守る者なのだよなあ。

『コンビニたそがれ堂セレクション』(村山早紀)
順番は前後しましたが、こちらもどうしても選びたかったのは何といっても装丁の美しさ故。いつまでも手に取って眺めていたくなる、そっと撫でていたくなる美しい本です。
これまでの「たそがれ堂」の物語から選ばれた珠玉の名作に加え、書きおろし「天使の絵本」がまたきれいな物語なのです。全てにおいてあんまり美しい本なので、この作品に関しては記事一本書きました。
本に関わる全ての人が、それぞれ奇跡や魔法をつくりだしているように思います。今年からの新シリーズ『かなりや荘浪漫』からもそれは感じられて、やはり本は、そして本に携わる人は尊いなあと思わずにはいられません。

『モリオ』(荻上直子)
猫好き必読作品にまた出会ってしまいました。映画「トイレット」の原案小説です。収録されている二つのお話には共通して猫が登場し、表題作「モリオ」では主人公を導き、「エウとシャチョウ」ではがんになった猫と主人公との日々が綴られています。
作中の猫との付き合い方が、人付き合いにも通じるものがあって、焦らずじっくりといくのが一番なのだなと胸に落ちていきました。
ゆったりと流れる時間は、荻上映画そのものです。

『鹿乃江さんの左手』(青谷真未)
女子校の魔女の話、という前情報から想像していたよりずっとミステリーで、ファンタジーではありません。その中で語られる憧れや羨望や愛しさが、心に鋭く切り込んできます。女の子の心の機微が鮮やかに描かれ、各章のラストはそれぞれ違うのに全て好きだと思える。
欲しかったけれど手離さざるを得なかったという苦い思い、少女漫画的なパニック、裏切られたような片思い、全部が愛しくて、今年読んだ中で一番好きな作品になりました。
どろどろとした感情すらも清く輝く、そんなパワーがあります。心の中にあったものが抉られあばかれて、それでもなお心地よいと思えるのは、読後感が良かったからだろうな。
今年は百合に恵まれた年だったと思います。

『大きな音が聞こえるか』(坂木司)
ただの青春物語ではありません。仕事もの、冒険もの、学園もの、スポーツものと様々な側面から描かれた人間ドラマから、働くこと、大人になること、夢を叶えること、人と関わることを考えられる作品です。一人称だからこそ、主人公と一体となって「体験」を読んでいける、だから読み進めるごとにわくわくします。
おそらく、若者が大人になるまでに経験するかもしれないことは網羅してるのではないでしょうか。大ボリュームで中身が濃くても、主人公泳の体験は自分の中にすっと入ってきます。「考える材料」の宝庫なので、例えば長期休みの読書感想文などにはちょうどいい作品なのでは。
共感と憧れが入り混じった大きな「波」を、こちらへ寄越してくるような物語です。

『エル・シオン』(香月日輪)
文庫で出るまで、この作品の存在を知りませんでした。まさにこんな熱い物語が読みたい、そのタイミングで発刊されたことが奇跡のよう。
ぶれることのない運命観と死生観、痛快なバトルシーン、人と神とのバランスのあり方と、香月さんから子供たちへ送る物語として重要なものがしっかり詰まっている。
バルキスとフップをはじめとするキャラクターや、物語の展開に胸が熱くなって、どんどん読み進められる。そうするうちにより想像が広がってわくわくする。さらに人の営みを動かすのは結局は人の力だというメッセージに、きっと子供の頃の私でも影響を受けたんじゃないでしょうか。


以上を選んでみましたが、いかがでしたでしょうか。
結局今年もあまり作品鑑賞文が出せなくて、年末の総まとめになってしまいました。来年も良い作品と巡り会いたいものです。いや、確実に出会えるでしょう。
すでに読みたいものがいくつか決まっていますし。2016年も、わくわくするような作品鑑賞ライフが待っていることを願って。
それでは、よいお年を!



posted by 外都ユウマ at 13:51| Comment(0) | 作品鑑賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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