2016年10月30日

文章収納しました

今月のお話をサイトギャラリーに収納しました。
礼陣群像劇、まとめてある連続ものを除いた話数がついに199話に。ギャラリーも随分見づらくなったなあ。

「鬼の語りを継いでゆく」
一力さんちのお話。紅葉も大きくなりました。
大助が話そうとしていたものも、詳細はいつかそのうち。
「おいてけぼりの秋」
流和とあっし桜。
ちょっとダウナーになってるだけですので、流はそのうち復活します。
「礼陣町語り 秋の夕暮れ」
神主さんと愛さんのお話。愛さんが中学生の頃なので、結構昔ですね。
以前にもちょっとやってますが、礼陣含む門地方空襲に関しては、もうちょっと勉強してから掘り下げたい。
「ボールと子どもの怪」
こちらもちょっと過去のお話。礼陣から出た海とよその怪談。
鬼の子全部がよそで特殊能力を発揮するわけではありませんが、海は顕著です。
「礼陣町語り 春の放課後」
神主さんと愛さんのお話。愛さんが礼陣に来たばかりの頃。
やさぐれていた時代が、慈愛の鬼の子にもありました。

以上5本でした。年末にかけて少なくなります。
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2016年10月23日

礼陣町語り 春の放課後

友達と呼べる人はいなかった。これからもずっとできないのだろうと思っていた。
私は他の子とは違うから。誰かの興味の対象にはなっても、好意の対象にはならないのだと、幼い頃から気がついていた。
私をわかってくれるのは家族だけ。五つ違いの兄と、七つ下の小さな弟。海外出張の多い両親には、心配をかけたくないから、友達がいないことは黙っていた。とうとう言わずじまいだった。もしかして知っていたとしても、それを追及されるようなことはことはなかった。自分で自分の世界を作ることができるのならそれで良いと、それが両親の教育方針だったことは、あとで兄から聞いて知った。それは私に、とても合っていたのだろう。
小学六年生になる直前に引っ越しをして、暮らす環境ががらりと変わった。住む町、通う学校、毎日顔を合わせる人たち。今までと違うことに戸惑った。一番妙だったのは、それまで私が他人と違うと思っていた要素がなくなったことだった。
後になくなったのではなく、この礼陣という町においては、特別なフィルターがかかるだけなのだとわかるのだが。
私には異形が見える。ひとならざるもの、生きているとはとても思えないようなもの、奇妙なかたちをしたものたちを、この目に映すことができる。私には、異能があった。

「一力さん、おはよう。ここにはもう慣れた?」
にこやかに話しかけてくるクラスメイトに、私はぎこちなく「おはよう」と返す。転校してくる前はあまりに人を避けすぎていて、誰かと会話をすることがすっかり苦手になっていた。
「まだ、あんまり慣れない……かな。家の片付けも終わってないの」
「そっかあ。時間ができたらさ、クラブ活動のこととかも考えてみてね。ちなみにあたしはバドミントンやってるの。一力さんはスポーツ得意?」
「得意ではない……かな。体力測定も、そんなに結果良くなかったの」
「ふうん、運動できそうに見えるんだけどな。なんか意外」
私が会話を苦手としていても、クラスメイトは私によく話しかけてくる。転校生に対する興味なのか、仲良くしたいと思ってくれているのか、今のところははかりかねている。人付き合いには慎重にならなければ。いくらこの町に来てから異形が見えなくなったからといって、ぼろが出ればたちまちに、人の態度というものは変わってしまうものだから。
嘘つき呼ばわりも、おかしい子だと遠巻きにされるのも、もうこりごりだ。それなら最初から近づかずに、適度に離れていたほうが楽だろう。それが小学生の私が辿り着いた処世術だった。
それなのに、クラスメイトはまだ話しかけ続けて……しかも人数がだんだん増えてくる。
「おはよ、リョウコ、一力さん。算数の宿題なんだけどさ、授業の前に答え合わせしない?」
「みんなー、おはよう。一力さんさ、昨日商店街で買い物してた? 社台高校の制服着た人、あれってもしかしてお兄さん? すっごくかっこよかったね!」
「うそ、そんなにかっこいいお兄さんいるの? 紹介してよ、一力さん」
「あの……ええと。たしかにそれは兄だけど……」
引っ越してきてからずっと思っていることだけれど、この町の人たちはまるで遠慮というものがないようだ。子供だけじゃない、大人もそう。向かいの家に住んでいる皆倉さんは、奥さんが外国人ということもあって習慣的なものがあるのかなと思っていたけれど、そうではないはずの人たちまであまりに……そう、言ってしまえば馴れ馴れしかった。
商店街を歩いていても、知らない人が親し気に声をかけてくる。近所の人たちもまるで私たちがずっとここに住んでいたかのように、当たり前の顔をしてお惣菜なんかを渡してくる。
きわめつけはこれだ。
――この町は鬼に守られているからね。安心して暮らしなさい。
いい大人が、「鬼」なんて非現実的な存在を持ち出して、安心しろと無責任なことを言う。私の知っている鬼は人に取り憑いて悪意を助長させるものだったから、守られているなんてとても信じられなかった。
何も知らないくせに、変なことを言わないでほしい。私みたいに、異形が見えるわけでもないのに。
「一力さん、商店街に行ったなら、神社にはもう行った?」
クラスメイトの一人が、遠くを指さした。家と街の向こう、小高い丘の上に、黒い大きな鳥居がある。あれはこの町のシンボルだという。祀られているのは――。
「神社には、春休みのあいだに一度だけ」
「あそこね、自由に遊びに行っていいんだよ。他の学校の子もたくさん来てるから、友達いっぱいできるよ。でも、鎮守の森には入っちゃいけないの」
ああ、だから一度行ったあのときも、子供が境内を駆けまわっていたのか。あれは許されていることだったのか。曖昧に「そうなんだ」と返事をして、笑って流しておいた。上手く笑えていただろうか。

礼陣神社の鳥居は、近くで見ると黒くはないことがわかる。深い緑色なのだった。
買い物は商店街のほうが得だと皆倉さんに教えられたので、私は毎日のようにおつかいに出されている。住宅街を抜け、大きな道路を渡り、駅の裏に入ったところに東西に軒を連ねる店。歩いていくには少し遠いので、近々新しい自転車を買ってもらえることになった。
神社は商店街の東端、和菓子屋さんの脇にある、石段の先。
引っ越しを随分と皆倉さんたち近所の人々に手伝ってもらってしまったために、お礼をしなければならなかった。和菓子屋さん「御仁屋」で、小さな箱詰めを四つ買う。少し重い。それなのに店の人は、「おまけだ」と言って小さなお饅頭を二つもくれたのだった。
大きな袋と小さな紙袋で両手が塞がり、うんざりする。お饅頭は、兄……は部活を決めなければならないとかでまだ帰ってこないだろうから、弟と皆倉さんの娘さんにあげよう。弟と娘さんは同い年で、並ぶととても可愛いのだ。
急いで帰ろうとして、けれども視線が石段の上へ向いた。鳥居があって、その先には境内がある。一度だけ来たときは子供が駆けまわる賑やかな場所だったけれど、今日はあまり声が聞こえない。では、今は誰もいないのだろうか。
ふらり、と足が石段に向いた。手にかかる重さは忘れていた。一段ずつ上っていくと、次第に境内が見えてくる。一番上に辿り着くと、そこは鳥居の真下で、脇に灯篭、手水舎、真正面に拝殿。少し離れたところにあるのが社務所のようだ。お守りなどの授与所も兼ねているようで、窓口がある。前に来たときにはじっくり見られなかったところが、今日はよく見えた。
来てしまったのだから参拝はするべきだろうと、手水舎へ向かう。ああでも両手が塞がっていたんだった、どうしよう……と途方に暮れかけたとき。
「おや、こんにちは。また来てくれたんですね」
頭の上から、声が降ってきた。穏やかで優しい、ふわりと吹く風のような声だった。
見上げると男の人が、笑顔を浮かべていた。にっこり、というには薄く、かといって無理に作ったような顔でもない。このうっすらとした微笑みが、おそらくはその人の笑い方なのだろう。
長い髪は束ねられ、浅葱色の袴を穿いている。あまり偉い人ではなさそうだけれど、神社の関係者だろうと予想がついた。
「……こんにちは」
やっとのことで挨拶をして、ふと気がついた。「また」ということは、初めて来たときの私を知っているのだろうか。
その疑問を口にしてはいないのに、そのひとはまるで問いを掬い取るようにして言った。
「春休み、引っ越してきたばかりの頃にいらしてくれたときは、きちんとご挨拶ができませんでしたね。私はここの者です。町の人は『神主さん』と呼んでくれますよ」
「神主さん……」
この人が? という言葉を呑みこむ。そういうからには、この神社の代表なのだろう。たしかに、他に関係者らしき人は見当たらない。
戸惑う私を、このひとは次の台詞でさらに混乱させた。
「一力愛さん、でしょう」
どうして私の名前を知っているのだ。息を呑んだけれど、逃げだすことはおろか、後退ることもできなかった。その場に足を縫い付けられたかのように、少しも動くことができない。おまけに目まで、「神主さん」から離せなかった。――優し気な眼差しが、ほんの少し赤く光ったように見えた。
そのひとはさらに目を細め、続けた。
「町の人の顔と名前なら、すぐに憶えられますよ。貴方は愛さん。お兄さんの名前は恵君、弟さんの名前は大助君。春休みにこの礼陣の町の、遠川地区西側に越してきた。あのあたりは洋通りとも呼ばれているんですよ」
「そうなんですか」
流れるような声に、私は自然と相槌を打っていた。それから片手の小さな紙袋を、目の前の相手に、初めて顔を合わせて話をしたそのひとに向かって差し出していた。
「よかったら、どうぞ」
弟たちにあげようと思っていたお饅頭。けれどもそのひとにあげたら、とても喜びそうだと思った。
「これは……! 御仁屋のおにまんじゅうではないですか。私の大好物です」
中身を見ずにそれと当てたのは、袋のせいなのか、それとも他に何か要素があったのか。当時の私にはわからなくて、ただただ頷いているだけだった。
「こんな素敵なものをいただいてもいいんですか?」
「はい。両手が塞がって困っていたので、いいんです」
「ありがとうございます」
そのひと、神主さんは、私の手から丁寧に袋を受け取った。そうして中身を一つ取り出し、私に返した。
「二個入っていますから、これは今、貴方が食べてください。美味しいですよ」
「は、はい……」
おずおずとお饅頭を受け取って、そのまま口に運んだ。どうしてもこのひとの目の前で食べてみせなければいけないような気がしていたのかもしれない。
結局のところ、それは正解だった。齧ったお饅頭は甘く、けれども口の中で餡子がさらりと溶けて、ちょうどいい塩梅だった。今まで食べたことのない美味しさだったのだ。
「わあ、本当に美味しい」
「でしょう? 昔からいい仕事をするんですよ、御仁屋の人々は」
神主さんもお饅頭を頬張って、今度はにこにこしていた。微笑みが地顔で、こっちが笑顔なのかもしれないと、思い至ったのはずっと後のことだ。
「……ここには、貴方を脅かすものはありませんよ」
夢中でお饅頭を食べていた私に、神主さんは何の脈絡もなく言った。
「貴方が見聞きするものを、信じるも疑うも自由です。人に話したっていい。誰もそれを咎めません」
口に物が入っていて、返事ができなかった。そのあいだに神主さんは手を振ってこの場から離れ、社務所の方へと歩き出していた。
「この町で、貴方が幸せを感じられますように」
その声が遠く聞こえた。最後まで柔らかな響きだった。


それから数年が経ち、私は社務所で神主さんにお茶を淹れている。
その数年の間にいろいろあって、私は神主さんと随分親しくなった。相変わらず人間の友達は少ないけれど、人と話すことは昔ほど苦ではなくなった。たぶん、慣れたのだろう。この町では、誰かの協力なしには生きられないと実感させられることが多いから。
今、幸せを感じられているかと問われれば、そうだと答えられる。人付き合いを避けようとしていた女の子はもういなくて、かわりに人と、そしてひとならざるものたちと関わっていくことを選んだ私がいる。
この町に引き込まれて、この町の食べ物を口にした。その瞬間から私はこの町の人間として生きることとなり、きっと縛られてしまったのだ。けれども嫌じゃなく、むしろ心地がいい。
「愛さん、今日のお茶請けは最中にしましょう。ちょうどいただきものがあるんです」
「根代さんが持ってきた最中なら、さっき鬼たちが食べてましたよ。残ってます?」
「ええ? ……ああ、ちょうど二個だけ。私たちのために残しておいてくれたんですね」
好意が向けられることはないだろうと思っていた私に、今は親しくしてくれる人がいる。私を想ってくれ、お菓子を残しておいてくれるような、そんなひとたちがいる。一緒にお菓子を食べようと、誘ってくれる人がいる。
私には異能がある。この町に来てしばらくしてから、その異能が役に立ち始めた。誰に疎まれることもなく、思う存分発揮して、それが多くのひとの助けになっている。
こんな未来があるんだということを、私は昔の私に教えてあげたい。そうしたらもっと、素直に可愛く笑うだろうか。
今の私が、きっとそうできているように。



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posted by 外都ユウマ at 15:56| Comment(0) | 創作文章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月16日

ボールと子どもの怪

女の子は毬つきが大好きでした。
ぽーん。ぽーん。
その日も家の前で、お気に入りのボールをついて遊んでいました。
ぽーん。ぽーん。
ところがあまりに夢中になっていて、気がつかなかったのです。
ぽーん。ぽーん。
ハンドルを切り損ねたトラックが、女の子のほうに向かってきていたことに。
どーん、ぐしゃっ。
女の子は家の壁とトラックのあいだで、潰れて死んでしまいました。
家は直されましたが、壁には女の子の姿が浮かび上がるようになりました。何度塗り直しても、黒い染みとなって現れるので、とうとう家ごと取り壊されることになりました。
けれども今でも、その場所を訪れた人には聞こえるのです。
ぽーん。ぽーん。
何もないのに、誰もいないのに、ボールが弾む音が。

「……で、そこでボールで遊んでると、出るんだってさ。女の子の幽霊」
声を低くして、しかし顔はにやついたままだった。終始そんな調子で話すものだから、疲れないのかな、と海は欠伸を一つした。
大学剣道部の合宿でのことである。夜中なのだから寝ればいいのに――ただでさえ朝は早いのだ――部員の数名がそんな話を始めたせいで、眠れなくなってしまった者もいた。こういうのは怖いと思う人には本当に怖いし、好きな人は悪趣味なくらい好きなものだ。
「現場、この近くなんだよね。オレ地元だからさ、昔から何遍もこの話聞いたの」
じゃあ今更するなよ、と思ったが言わない。寝てしまいたかったが、彼らがうるさくて眠れないので、とりあえず話を聞いていた次第である。これなら地元の先輩が好きで見ていた、海外のホラー映画のほうがよほど怖い。たしかあれは、厳密にはサイコスリラーとかそういう類のものだったような気もするが。
「今から行かね? すぐ近くだしさ」
「マジかよ、もう日付変わったぞ」
「二時くらいに行くのはどうよ。丑三つ時っての?」
馬鹿馬鹿しい、変にパニックになって稽古に身が入らなかったら迷惑だ。知らないふりをして寝ようと思ったら、布団を捲られた。
「進道、行くよな? お前たしか霊感あるんだよな」
そんな大層なものではない。誰がそんなこと言ったんだ。そう言おうとしたその前に、周りが口々に囃し立てる。
「そうなの? 進道って見えちゃう人なの?」
「たしかコイツの出身地がさ、変な噂で有名なとこなの。鬼がいるとかなんとか。某県の山の中らしいんだけど」
「怖がるような話は何もない」
「ほら、怖くないんだもん、コイツ。慣れてるんだって」
勝手な解釈をされては困る。というより、鬱陶しい。けれども布団を取り返すほどの気力も残っていないので、そのまま背を向けて無視しようとした。
「なあ、進道が一緒に行ってくれたら安心するんだって。行こうぜ」
行かないほうがよほど安心だと思うのだが。

結局引きずり出されるようなかたちで、外に出てしまった。音楽プレーヤーを家に忘れてきたのは本当に痛手だ。あれさえあれば、保存しておいたラジオ番組を聴いてやり過ごせたのに。
「あそこらへんに家があったんだ。柵で囲ってあるだろ。マジで見たとか聞いたとかそういう話がありまくって、とりあえず閉鎖したんだって」
人の敷地に興味本位で入ってくる輩が大勢いれば、そりゃあ閉鎖もするだろう。自分も今その輩の一員になろうとしているという事実が、海にはとても不快だった。
「進道、行ってみろよ」
「嫌だよ。なんで連れてこられた俺が先に行かなきゃならないの」
「だって霊感あるんだろ」
あったからどうだというのだ。幽霊とやらを説き伏せたり祓ったりできると、本気で勘違いされているのだろうか。それは心霊特番と漫画とアニメの見すぎだろう。
ない、とはっきり否定しないのは、嘘を吐くのが面倒だからだ。一旦吐けば重ねて塗りつぶさなければならなくなる。つまりは霊感ともしかしたら呼べるかもしれないものが、あるにはあるのだ。しかし海の場合、それは地元でのみ働くはずの感覚である。
地元、某県門郡礼陣町には、鬼にまつわるたくさんの伝承と、本物の鬼がいる。それは本当のことで、けれどもわざわざ他人に話したりはしていないはずだった。
ただ、出身地を言ったら、調べられた。それだけだ。ネット上に転がっている噂の中には、自分の家のことであろうものも混じっていた。町の剣道場には鬼が住んでいる、と。誰だ、こんなことを書きこんだのは。根も葉もないと言いきれない分、余計に厄介だ。
「じゃあ、ちょっと行って写真撮ってきてくれるだけでいいから。写メって送ってくれればさ」
「だけ、じゃないだろ。勝手にやること増やすな」
ノリの悪い奴と思われてもいいから、布団に張り付いておくのだった。後悔しながら、結局柵に囲まれた場所へ向かうのだった。

その「心霊スポット」は、手入れが行き届いていた。柵もきれいで、暗い中だが落書きなどは見受けられない。周囲も草が刈られていて、荒れている様子はない。変な噂がある場所は往々にして荒らされるものだが、積極的にきれいにしておくことで、そういうことをする輩に手出しをさせないようにしているのだろう。土地の管理者の行動は正しい。
柵は木製、高さは海の胸くらい。向こう側を覗けるが、何もないようだった。柵で囲ってあるのに中身がないから、変な噂を呼んでいるのかもしれない。人間というものはある程度の想像力があって、ドラマが大好きなのである。それも自分の損にならない都合の良いドラマが。
とりあえず何もないことを証明しようと携帯電話のカメラアプリを起動し、かざす。カシャ、という電子音が響いて、画面に撮ったばかりの画像が表示された。
やはり何もない。でもこれでいいだろう、言われたことはやった。海は柵に背を向け、戻ろうとした。
途端、何かがぞわりと背中を撫でた。とても冷たい何かで。
振り向いても、何もない。ぽっかりと暗闇があって、柵がぼうっと浮かんでいる。その向こうもまた闇だ。さっきまでそうだったのだから、当たり前だろう。
何も感じなかったことにして、また歩みを進めようとした。しかし今度は、Tシャツの裾を引っ張るものがある。目をやると、手までちゃんと見えた。白くて小さい手だ。
無視できなくなってしまった。子供に優しい町礼陣出身、小さいものには弱いのだ。ことに実家の剣道場で小中学生の相手をしてきたおかげで、海は年下に気を配るのが当たり前になってしまっている。――その人柄にもよるので、優しくするのは当然ではない。
「……何」
囁くように声を投げてみる。すると細く高い声が返ってきた。
「にげないの?」
あの怪談話が事実かどうかはさておき、女の子がここにいるのは間違いない。
「逃げないから、用があるなら言ってごらん」
聞く耳を持つかどうかは別として。
もし無理な頼みでもされたら、聞かなかったことにしてすぐに逃げよう。そう思っていたのがわかったのか、裾を掴む手にきゅっと力が入った気がした。
「ボールがないの」
「ボール?」
怪談話の、あのボールか。女の子が死の間際まで遊んでいたという。そういえば、ボールがどうなったかまでは話に含まれていなかった。
ただ、ここを訪れるとボールの弾む音が聞こえるという話だったが、ないというのはどういうことだ。
「なくしちゃったの」
「どうして」
「わかんない」
生じた矛盾が気になって、逃げ損ねた。小さく細い声が、はっきりと聞こえた。
「おにいちゃん、さがして?」

幽霊を説き伏せたり祓ったりした経験はない。だからそれができると思われるのは勘違いだ。だが、海は人ならざるものと対話し、ときにそれが持つ「呪い」と対峙したことがあった。中学生のときはそれで三年間をほぼ潰したようなものだ。いや、もっと遡れば一歳のときからそういうものに振り回され続けてきた。家に厄介なものがいるのは本当のことだ。
それらと同じようなものなら対応できるだろうかと、小さな手を掴んで振り向いた。それと真正面から向き合うかたちになるが、屈んでみても、子供らしい姿はなかった。どうやらこれは手と声だけの存在のようだ。
「あのさ、探すなら昼間のほうが良いよ。夜は見えないから」
「おひるはおそとにでられないもん」
「普段はどこにいるんだ?」
「おうち」
「お家はどこ?」
「……」
ここに出るのだから、近くではあるのだろう。ここにかつてあったという家ではなさそうだ。なぜなら話が違うから。
この近辺には民家がある。そのどれかがこの子の家だ。手を掴んでいるから指し示すことができないのだと気がついて、放してやった。
小さな手の、小さな指が、ある家を指した。ビンゴ。
「わかった。昼間に、俺がボールを探して届けてあげるから」
「そとであそんだのばれちゃう」
「ばれたほうが良いんだ、この場合。とにかく今日はもう戻れ」
戸惑っているのか、手だけがしばらく彷徨っていた。しかしそのうち、ふっと消えた。いうことを聞いてくれただろうか。そうであれば、まだ何とかなるかもしれない。
携帯電話の画面、柵の向こうを撮ったその端に、丸いものが小さく写っていた。


「進道だけ感謝されてんじゃねえよ。偶然ボール見つけただけのくせに」
合宿のときに怪談話をしていた奴が文句を言った。冗談じゃない、先に行かせたのはそっちだろう。
あの翌日、昼食返上で合宿所を抜け出した海は、ボールを拾って目的の家に向かった。家の中からは薄汚れたパーカーに擦り切れてぼろぼろになったジーンズといったいでたちの女が出てきて、海の持ってきたボールを汚いものを見るように睨んだ。が、その視線は無視して、家に入り込んだ。ともすれば犯罪者として通報されかねなかったが、そんなことはまるで考えていなかった。
ただ、家の奥にいた女の子を。汚れた服を着て、体中痣だらけになり、痩せこけたその子をどうにかしなければと、それだけを考えていた。
礼陣という特殊な土地で特殊な育ち方をしたせいなのか、虐待をしていたのが母親だったからなのか、海の勘はすでに勘ではなく、確信だった。あの小さな手の主はまだ生きていて、けれども確実に死に近づいているということが、はっきりとわかった。実体ではない手を握って、話をするだけで。
間違いなら間違いでいい。子供が普通の生活をしているのなら、虐げられていないのなら、それで良かった。けれども確信は外れてくれなくて、結局、女の子は保護された。そう経たないうちに親戚に連絡がつき、ひとまずそちらに引き取られることになった。しかしそれで完全に解決、とはならないだろう。
地元では、子供を虐げた大人には人ならざる者たちの裁きがある。普通は起こりえないことが当たり前になっていて、だから人々の考えも「世間一般の当たり前ではない」。そのため自分の行動が、衝動的だったそれが正しかったのか、海にはわからない。
ただ、届いた手紙が。「お兄ちゃん、ボールありがとう」と書かれたそれが、あの子の生存報告であることは、きっと間違いない。偽物ならすぐわかる。
女の子の生霊らしきものと会ったことは、誰にも話していない。ただボールを見つけて持ち主を探していたら、偶然その家に行きあたったのだと説明した。貫き通せば嘘やごまかしも真実になるのだなと、身をもって知ることとなった。
「偶然ボール見つけられたのは、お前のおかげだよ。俺から感謝しておく」
「お……おう。そうか?」
怪談話を無視できなかったこと、あの場所に行くのを断れなかったこと。本当に全てが偶然だったのか、今更考えてもわからない。子供がこれからどうなるのかは少し気になるが、あの母親がどうなったのかはどうでもいい。
手紙には返事を書こうと、それだけを留めた。



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2016年10月15日

礼陣町語り 秋の夕暮れ

丸い形のべっこう飴を一つ口に放り込み、包んだままのもう一つは制服のポケットの中にしまう。これは持って行って、あのひとにあげるのだ。
人、ではない。彼は人間と同じ姿をしているけれど、その姿をもう何百年と保ってそこに居続けるのなら、人とはいえない。町の人たちもそれをわかっていて、そのひとのことを異口同音に呼ぶのだった。
「神主さん」
私もそうする。けれどももし声にルビがふられるのなら、こうなるのだ。――「大鬼様」。
誰がいつ呼んだって、神主さんは笑顔で振り向いて、相手の名前を言う。
「愛さん、いらっしゃい」
大きな深緑色の鳥居の下、きれいに掃かれた境内に立って。

私が礼陣の町に引っ越してきて、二年と半年。ついこのあいだ、両親の一周忌を迎えた。まるで子供たちを永遠に置いていくその日を知っていたかのように、彼らは私たちをここに連れてきて、そうして一年と三か月ほどで、遠い海で死んだ。
飛行機の事故だった。色々な不幸が重なってしまい、乗客は誰も助からなかった。両親は外国での仕事からこの国に帰って来るところで、私たちはこの町に住む叔父とともに、お土産を楽しみに彼らを待っていた。何も知らずに、暢気に笑っていた。あのニュースが流れるまでは。
おそらくは両親の命が尽きたであろうその瞬間から、私の目に映る景色は一変した。もともと人には見えないようなものを「視る」ほうではあったけれど、この町に越してきてからはなかったから、その光景には驚いた。街を歩く様々な姿の異形の者たちは、しかしながら一様に、頭に二本のつのをもち、瞳が赤かった。その異形をこの町では「鬼」というのだと、教えてくれたのは近所の人だ。どうやら鬼は、この町にはいて当たり前で、けれども見えるのは親を亡くした子供だけという、悲しいかたちで認められているひとびとのようだ。
鬼たちの筆頭が、この町の北東の方角にある礼陣神社の神主さん、大鬼様であることも、同時に教わった。人間にしては不思議な雰囲気のひとだな、と思っていたら、本当に人ではなかったのだった。
鬼のことを、この町の仕組みを、鬼が見える「鬼の子」というものの存在意義を知りたくて、神主さんに近づいた。私が尋ねれば、このひとは応え得る限りの答えをくれた。そうしていつしか鬼に詳しくなり、鬼たちと言葉を交わしたり遊んだりすることができるようになった私を、神主さんは巫女として受け入れてくれた。鬼と深く関わることのできる人間だと認めてくれたのだ。
そうして過ぎた一年を振り返り、私は神社の境内へ続く石段から、街を眺める。人間と鬼が入り混じって歩く光景が、私にはもう当たり前になってしまった。そしてそんな私をおかしいと言う人も、この町にはいないのだ。
異形が見えることを不気味がられることは、ここにいる限りはない。私がこの町に来る前まで感じていた息苦しさが、ここに来てからはなくなった。それが素直に嬉しい。
「このべっこう飴、美味しいですね。富田屋さんのですか」
石段に座った私の隣に、神主さんが腰を下ろす。並んで眺める向こう側は、もう陽が落ちかけていた。秋の夕方は短い。
「一個買ったら、おまけにもう一個くれたんです。福々堂さんのと似てますねって言ったら、同じだもの、って言ってました」
「ああ、そうなんです。このあたりの駄菓子屋さんは、だいたい同じメーカーから卸してるんですよ。みんなで美味しいものや人気があるものの情報を共有して、町中の子供が手に入れられるようにしているんです」
「経済的競争の観点から見てどうなんですか、それは」
「あんまりそういうことを考えていないんですよね。愛さんは、そういうことを考えたほうがいいと思いますか?」
「ううん……お店を続けていくためには必要なことだとは思います。でも、口に出してみるとたしかにそれだけじゃつまらないですね。この町の駄菓子屋さん、本当に子供のためのお店って感じなので」
「そう、そうなんですよ」
この町が「子供のため」を中心に動いていることに気づくたびに、神主さんは喜ぶ。はるか昔、神主さんはここに住む人間たちと約束をしたのだそうだ。子供たちを守ると。そうすることでこの場所を守ると。この町が子供たちのために運営されているということは、神主さんがその役割を果たせているということであり、人間たちが先祖たちの意志をきちんと継いでいるということでもある。
時代とともに変わるものはたくさんあって、それは当たり前のこと。そのなかで根っこの部分が変わっていないことを、神主さんはいつも確かめているようだった。確かめては、嬉しそうにしていた。
現にこの町の子供たちは元気で、神社を含む町のそこかしこで集まっては、賑やかに遊び、笑っている。私の弟だってそうだ。小学生になって、友達がたくさんできた。親がいないことなんか、誰も気にしていなかった。
この町は居心地がいい。私たち子供にとって、そしてきっとそうやって育った大人にとっても。
小さくなった飴を口の中で転がしながら、私は神主さんに問う。
「神主さん、幸せですか」
「この町のみなさんが幸せなら、私は幸せですよ」
「そうですよね」
このひとはそういうひとだ。初めて出会ったときから、いや、そのずっと前、大昔から。
「じゃあ、町の人が不幸なら、神主さんは不幸なんですか」
「……そうですねえ。不幸、というよりは、悔しかったり腹立たしかったりします。不幸からみなさんを助けてあげられない自分自身が、もどかしくてなりません」
苦笑する神主さんは、私にそう言いながら、どこかずっと遠くを見つめていた。沈む夕日のその向こう。私なんかでは到底辿り着けないような場所を。
そうして、昔ね、と。水滴のような言葉を零したのだった。
「昔といっても、私にとってはつい最近。昭和二十年のことです。大東亜戦争……とは、愛さんたちは言わないのでしたか。とにかくあの大きな戦争のときに、私はたくさんの人を助けそこなったんです。あれはとても悔しくて、悲しかった」
「戦争で、ですか」
口の中で、かり、と飴が砕けた。
「戦争は、仕方がないのでは。たしかに神主さんは人間ではありませんけど、一度にそんなにたくさんの人を助けることはできないって、前にも」
「ええ、私の力は限定的です。この礼陣の町の中でだけ、私は私の鬼としての力を使えます。その中にいない人には、力が及びません」
礼陣という、この町の地名。諸説ある、とはいわれているけれど、神主さんは「霊陣」、つまり人間を超えた力が及ぶ範囲であると教えてくれた。あれはたしか、私が両親を失って間もない頃だ。
「戦争のときに、この町は安全だといわれていたんです。山間にある田舎ですから、狙われる理由がなかったんですね。ええ、少なくとも誰も思いつきませんでした。だからこそ山の向こうからたくさんの子供たちが疎開してきましたし、私や町の大人たちは子供たちにできるだけ食べさせるために尽くしました。人々はこの国の勝利を信じていましたし、そのためなら何でもしようと、小さな拳を振り上げていたものです。……私は、それがありえないと言えませんでした」
それはそういう空気が国中にあったからだろう、と私でもわかる。人々は苦境が必ず報われると信じていたかったのだ。そういう時代があったことを、そのころ影も形もなかった私は、学ぶことでいくらか知っている。
けれども神主さんのいう「助けそこなった」は、人々の意識の問題ではなかった。
「戦争には勝てないだろうと、その予測はできました。でも、この町にまで戦火が直接及ぶことまでは、私も考えていなかったんです」
「……空襲かなにか、あったんですか」
「はい。この何もない田舎を狙って、飛行機が爆弾を落としていきました。貴重な弾薬がもったいないはずなんですけれど、たぶん彼らには彼らなりの理由があったんでしょう。私はそれらから、人々を守るのに必死でした。鬼たち総出で大きな楯を作って、礼陣の町を守ろうとしました。結果、落ちてきた爆弾は街を逸れていったわけですが」
「だったらいいじゃないですか。鬼って、やっぱりすごい力を持っているんですね」
「いいえ」
礼陣を守れたのだったら、それで十分だろう。私だけでなく、誰もがそう思うはずだ。しかし神主さんは首を横に振って、もう一度「逸れていったんです」と言った。
「爆弾が消えてなくなったわけではありません。逸れて方向を変えた爆弾は、あのあたりに落ちました」
すっと指をさしたそちらには、遠川が流れている。指先をよく見て、もう一度街を見て、私は息を呑んだ。あちらには、私が今住んでいる家があるのだ。
「当時、現在の遠川地区西側と川向こうの南原地区は、まだ礼陣ではありませんでした。しかしそちらにも、もちろん人は住んでいて、生まれ育った子、そして疎開してきた子らがたくさんいました。彼らには私の力が及ばず、逃げ遅れて、家ごと燃えていきました」
炎をあげる礼陣の「外側」を、神主さんは、鬼たちは、助かった人々は、どんな思いで見ていたのだろう。本来ならそこに落ちるはずではなかった爆弾まで浴びて、命を落とす人々が、私の住んでいる場所にいたのだ。
両手で自分の腕を抱くようにして、私は神主さんの指さす方向を、自分の家とその向こうを見つめた。
「彼らを犠牲にして、礼陣の人々を助けました。命は助かりました。でも、誰もが心を痛めました。……あれは、つらい出来事でした」
焼け野原になった場所は、戦後に復興していく。礼陣の、助かった人々が、そこにまた人が住めるように、生きていくことができるように街を整えた。そうして、その場所も礼陣となったのだった。神主さんはそれに合わせて、力の範囲を広げたという。以前より薄くはなったけれど、力は行き届くようになった。鬼たちは遠川地区の西側と、新しくできた橋を渡って南原地区にも現れるようになった。
「川のこちら側はともかくとして、向こう側、南原は今でも鬼がなかなか行かない場所になっていますけれど。あちらはあちらの発展の仕方をして、今では中心部と同じくらい賑わっています」
「南原が礼陣にしてはちょっと毛色が違うのは、そういうわけなんですね。たしかに、鬼をあまり見ません」
納得しながら、私は昔の礼陣に思いを馳せる。神主さんの力が及ぶ範囲が今よりも狭く、けれどももう少し強かった、いつかのこと。狭い地域のほんの一握りの人を救うかわりに、他の人を犠牲にすることとなった日のこと。――瞼の裏に炎が見えた気がしたけれど、それは私の知識の範囲内で構成された映像で、実際の光景ではない。
「でも、礼陣の、こちら側にいた人たちにとっては奇跡ですよね。その人たちはたしかに、神主さんたちに救われたんですから」
「良い方に捉えれば、そういう見方もできます。でも、自分でもあれは、冷徹な選択だったと思いますよ」
しかたないじゃないですか、とは、簡単には言えなかった。ただの鬼が見えるだけの人間である私が、このひとに何を言ってあげられるだろう。
ただ黙って、夕日が沈むのを見た。空の群青が濃くなってきた頃、私は立ち上がって、先ほど神主さんが指さしていた方へ歩き出す。
「そろそろ帰らなくちゃ。お兄ちゃんの食事を用意して、大助にご飯を食べさせて、他にもいろいろやることがあるので」
「愛さんは忙しいですね。私の長い話を聞いてくれてありがとうございました」
「鬼の話を聞くのも、巫女の役目ですから」
私が笑ってみせると、神主さんはやっと小さく微笑んだ。
神主さんの思い出を、私が塗り替えることは不可能だ。でも他に目を向けさせることはできる。私を見てもらうことで、神主さんが少しでも幸福になれるのなら、私はいつでも幸せそうに笑っていなくてはならない。
私が住んでいるのは焼け野原ではなく、今の人々が生きている場所。礼陣なのだ。私は礼陣で、これからも生きていく。神主さんとともに。
私の家からでも、神社の鳥居はよく見える。礼陣を守るひとがいる、その場所がわかる。



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2016年10月09日

おいてけぼりの秋

役場の蛍光灯を換えていたら、ちょうどその場面に出くわした。妹と、自分の大学の同級生だった男が、連れ添って窓口にやってくる。そういえば今朝、両親と話していた。遅番だから、書類を出してから職場に向かうと。
つい凝視していたら、妹たちがこちらに気づいた。それぞれに呆れたような、困ったような顔をして、脚立に足をかけている自分を見ている。
「桜、あっし、おめでとう!」
思い切って声をかけたら、恥ずかしそうにしていた。妹に至っては、兄に向かって「馬鹿」と言う始末。周りの職員は今誕生した一組の夫婦とその兄を、微笑ましそうに眺めていた。

流が役場に勤め始めて、ひと月以上が経った。今は臨時職員だが、社会人枠で本採用試験も受けたので、うまくいけば来年には正職員になれるかもしれない。結局、親がかつて望んだコースに乗ろうとしているのかと思うと、少々悔しくはある。しかしこれが今できる最善手だった。
大学を卒業してからしばらく海外にいたが、ここ最近の世界情勢の危うさに、周囲からの多大な心配が寄せられていた。加えて実家で飼っていた犬の具合が悪くなっていたのと(八月の下旬にとうとう虹の橋を渡ってしまった)、その他諸々の事情が重なって、生まれ育った町に帰ることを決めた。犬の見送りができたことと、妹たちの門出を祝えたことで、選択は間違っていなかったと思える。
一緒に国外に出ていた和人は、実家に戻って家業を手伝っている。都合よく戻って大丈夫だろうか、と本人は案じていたが、予想以上に彼の帰還は歓迎された。両親はもとより、店で働くパート従業員らが大喜びだった。さすがは礼陣駅裏商店街のアイドルだ。現在も奥様方や後輩たちに大人気である。
お互い、しばらくは故郷で地道に暮らして、落ち着いたらもう一度海外に出ようと約束はしている。それがいつになるかは、今のところわからないのだけれど。
とにかくまずはしっかり働いて、元手を稼がなければ。何も金は、海外渡航のためだけに必要なわけではないのだ。家族や知人の祝い事も、これからどんどん増える予定だった。
そういうわけで、ずっと一緒に暮らしてきた二人は、今は別々に生活している。

役場の臨時職員は定刻に帰るようにいわれている。余計な経費をかけたくないのだそうだ。とはいえ給料は安くはないので、こちらも余計なことをしなければ余暇を楽しむだけの余裕を持てる。本日の仕事を終えた流は、そのまま帰宅はせずに駅裏商店街へ寄り道し、酒屋でビールを二缶買った。日本人の好きなキンキンに冷えたものではなく、少しぬるめのもの。季節柄を考えても、こちらのほうがいいだろう。
そうして向かったのは、商店街の東寄りに位置する水無月呉服店。和人の実家だ。まだ営業中で、店内には客がいた。表から入るのはまずいと判断し、建物の隙間から裏にまわる。
呼び鈴を鳴らすと、優しげな返事とともに足音が聞こえる。裏口、と誰もが呼んでいるこの家の玄関から出てきたのは、着物姿の婦人だった。微笑んだ顔と髪質が和人に似ている。
「あら、流君。お仕事お疲れさま」
「お疲れさまです、おばさん。和人は店ですか?」
「今ちょうど接客中なの。あがって待っててくれるかしら」
「おじゃまします。あ、手伝いとかは必要ですか」
「お仕事終わったんだから、ゆっくりしててちょうだい」
もう少しどこかで時間を潰してから来るんだった、と思う。閉店の頃に来れば、片付けの手伝いができた。学生時代に慣れた掃除なら、今でも役に立てるだろう。
流を居間に残して、和人の母は再び店に戻っていった。呪文のように淀みなく流れる言葉を忘れずに。
「菓子鉢は食器棚、飲み物は冷蔵庫。テレビ番組も好きなのをどうぞ。雑誌と新聞はテーブルの脇よ」
ようは勝手にしていいということで、どうやら大人になった今でも許されるらしかった。それでも子供の頃のように甘える気にはなれず、静かになった部屋でスマートフォンを弄る。毎日何かしらの動きがあるメッセージアプリのタイムラインは、妹が婿を迎えたことで盛り上がっていた。
そう、婿なのだ。一応はこの町の名士である野下家に、妹の夫は籍を置くことになった。それもこれも、流が家を継がないせいだった。継がないつもりで出たのに戻ってきたから、実は今、生家はあまり居心地の良い場所ではなくなっている。父からの小言も煩わしい。
だったら独り暮らしでもすればいい。頭ではわかっているのに、行動が伴わない。愛犬の死を引きずっているということもあるし、帰ってきたときに変に喜ばれてしまったからというのもある。それだけ心配されていたのだ。学生時代まで使っていた部屋も、そのままきれいに整えられていた。
居心地が悪いのは、流の心持ちのせいだ。
「あのね、流。来るなら来るで、役場を出たあたりで連絡くれないと」
出かけた溜息は、その声で引っ込んだ。いつの間に仕事が済んだのか、いやそれともわざわざ切り上げてくれたのか、着物姿の和人が居間の戸口に立っていた。
「や、お疲れ」
「お疲れ、じゃないよ。まだ仕事残ってるんだから」
「片付けなら手伝う。どうせ今日は家に帰れないし」
「帰れないんじゃなく、帰らないんでしょう。手伝ってくれるなら、ジャケット脱いで掛けてきて」
いつもと変わらない対応に、おや、と思った。もしや和人は、妹のことをまだ知らないのではないか。事情を知っていたら帰るように促すだろう。
それならそれで、と言われた通りにジャケットを掛け、すでに表を閉めた店に出る。和人の父が事務仕事をしていたので、挨拶をした。
「おじゃましてます」
「いらっしゃい。ゆっくりしていて良かったのに」
「ここに来たら動きたくなるんですよ」
本当のことだ。黙って待っているのは性に合わない。和人の指示通りに店内を掃除し、ごみをまとめて捨てに行くのが、ここでの自分の仕事だった。
一通り終わる頃に、母屋からふわりと香る味噌の匂い。
「今日の具、何だろうな」
「茸じゃない? 平木のおじいさんが持ってきてくれたから」
「あのじいさん、まだ茸採り行ってるのか」
「らしいよ。僕もびっくりしたんだけどね。さて、着替えてご飯にしよう」
着替えるのに自室へ向かった和人を、流は鴨の子のように追う。ごく自然に室内に一緒に入り、昔から少しも変わらない、しかし今は自分の部屋よりも居心地のいいそこに腰を落ち着ける。和人はかまわずに帯を解いて、着物を脱ぐ。こちらに帰ってきてから、着替えの習慣がついた。以前は洋装にエプロンだけをかけて店に出ていたから、もっと支度が楽だった。
「着物、慣れたか?」
「とっくに。そっちこそどうなの、スーツ」
「さすがに慣れた。クールビズも終わったし」
「だね。ちゃんとしなきゃ、またおじさんに叱られるだろうし」
和人の言うおじさんとは、つまり流の父で、役場では直属ではなくとも上司にあたる。誰にでも厳しい人ではあるが、息子である流には特に容赦がない。もしかするとそんなふうに感じるのは流だけかもしれないけれど。家での小言のほうが印象が強いから。
「……ちゃんとしてても、おじさんに叱られるね」
昨夜の小言を思い出しかけていたら、和人が溜息交じりに言った。気がつけば彼の手にはスマートフォンがあって、画面には見慣れたタイムラインが表示されていた。
「桜ちゃんたち、今日結婚したんだ。てことは、今夜は流の家はご馳走なんじゃないの」
「別に俺がいる必要はないだろ。桜のことなんだし」
「桜ちゃんにとっては、流は唯一のお兄さんでしょう。あっし君だって友達なんだから、お祝いした方がいいんじゃない」
「役場でおめでとうって言った」
そう、とだけ返事があった。これ以上は何を言っても無意味だと察したのかもしれない。部屋を出ようとしたので立ち上がり、また後ろについていく。
居間に行くと、すでに流を含めた分の食事が用意してあった。

ビールを片手に着信をチェックし、どう返信したものかと考えているあいだに、和人が風呂から戻ってくる。もう一缶を渡すと、ありがとう、のあとに呆れた言葉が続いた。
「迷うくらいなら帰ればいいのに」
「帰ったところでアウェーだからなあ。オオカミももういないし」
「アウェーなんじゃなく、流が寂しいんでしょう。しばらくこっちに顔出さなかったから大丈夫かなって思ってたんだけど、そうでもないんだね」
缶を開けて一口飲んでから、和人がちょっと顔を顰める。風呂上りは冷たいほうが良かったらしい。文句は言わなかったけれど、察することはできた。
「オオカミが死んでから、どこにいても身の置き場がない気がして。時間が経てばそのうち慣れるかと思ったけど、なかなかそうはいかないな。桜にはあっしがいるからもう大丈夫だろうって考えたら、いよいよ取り残されたような感じがしてさ」
「気のせいだよ。誰も君を置いていったりなんかしてない。勝手に立ち止まって置いていかれたって思うのは、桜ちゃんたちも心外だと思うけど」
「わかってるよ。……今までこんなことなかったのにな。寂しいっていうのが初めてで、どうしていいのかわからない」
ぬるいビールを飲みほして、メッセージを入力することを諦めたスマートフォンを放り出し、敷いてあった布団に寝転ぶ。今更帰ったところで情けないのは変わらないので、今日はここを動かないことにした。言い訳は明日すればいい。
そうやって逃げても、きっと胸に溜まり続ける冷たいものは、離れてくれはしない。
「流」
名前を呼ぶ声と、温まった手が、耳を撫でた。
「たぶん、だけど。今の君は、大学時代の僕に似ているんだよ」
「そっか、こういう気持ちか。どうしたらいい?」
「どうも何も、流が会いに来てくれたんだよ。そうか、僕が会いに行けばよかったね」
ごめんね、と言われそうだったので、その前に起き上がって、和人を抱きしめた。そのせいなのか、それ以上は何も言わなかった。
言わない代わりに、背中を優しく叩かれた。子供にするみたいに。いつか流が和人にそうしたように。

ああ、まだ、抜け出せそうにないな。それまで日々を過ごすしかないな。
なんとか大人のふりをして。



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posted by 外都ユウマ at 15:17| Comment(0) | 創作文章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月08日

鬼の語りを継いでゆく

むかし、むかし。里に仲のよいととさまとかかさまが住んでいた。
かかさまの腹にはややがいて、もうすぐにでもうまれそうだった。
ととさまはかかさまとややのために、毎日山で働いていた。
ちょうど里の人々は、大きなお社を作ろうとしているところだった。ととさまはお社を建てるために使う木を、山で切っては運ぶ仕事をしていた。
ととさまはかかさまとやや、それから自分の仕事を、とても大切に思っていた。
ある日、かかさまがととさまを仕事に送りだしてから、とうとうややがうまれそうになった。かかさまは近所の人々と、それから里に住む鬼たちの手を借りて、ややをうもうとした。
ととさまが帰ってきたらびっくりするだろな、と思いながら、うんうんうなってがんばった。
ところがそのころ、ととさまは山で大けがをして動けなくなっていた。まわりにはだれもおらず、ひとりでとほうにくれていた。遠くでととさまをよぶ声が聞こえたが、返事をすることもできなかった。
おおい、ここだ。心の中で叫ぶばかりのととさまに、だれも気付かなかった。
もうだめだ。あきらめかけたととさまの前に、ぬっとでてきたものがあった。それは頭にりっぱなつのがある、この里を守る大鬼様だった。
大鬼様はととさまに、優しい声で言った。
ややがうまれた。かかさまもややも元気だ。なんにも心配はいらない。
それをきいたととさまはほっとしたけれども、かかさまとややに一目でも会いたいと願った。体はもう動かない、声も出せないととさまには、もうできないことだった。
かわいそうに思った大鬼様は、ととさまにまじないをかけた。人間だったととさまを、鬼にするまじないだった。頭につののある鬼になったととさまは、すっくと立ち上がり、大鬼様にお礼を言って、それからびゅーんと山を駆け下りた。かかさまとややが待つ家へすっとんでいった。
帰ってきたととさまを見て、かかさまはびっくりした。頭のつのはどうしたんだとたずねると、ととさまはただただにっこり笑った。
元気なかかさまと、元気なややに会えたことが、ととさまには何よりもうれしいことだった。
鬼になったととさまは、それからかかさまとややを守るようになった。山に入る仕事はもうできないけれど、かわりにとても強い力を手に入れた。
ややが大きく育つまで、鬼のととさまは、家を幸せにし続けたんだと。


礼陣の昔話には、必ずといっていいほど鬼が出てくる。鬼と呼ばれる存在と、人々が密接であることが、物語の数々からわかる。
鬼は実際に存在する。多くの人には見えないが、今でも一部の子供には見えるものだし、かつては見えたと主張する大人たちがいる。ある学者はこれを集団ヒステリーだ、伝承をもとにした幻覚だと言ったが、それだけでは説明のつかないことも頻繁に起こっている。
この土地の現象と伝承を研究し続けている頼子の周りにも、よそから見れば奇妙だが内側には「あたりまえ」のことが、ごく自然に発生していた。義妹、義弟、教え子の一部は、礼陣の持つ秘密にとても近いところにいる。
全てを暴いて広める気はないが、納得はしておきたい。それが頼子の研究目的だ。知ってどうすると言われたら、そう答える。
そうして集めることができた礼陣の昔話は、現在、息子である紅葉の子守唄になっている。

「話を間違えたり飛ばしたりしたら怒るんだよ、ちがうって。内容を暗記してるんだね。これも頼子の教育の賜物というか……」
悪く言えば毒されているか。そこまでは言わなかったが、話をせがまれる方としては、たぶんに厄介なのだろう。それでもどこか嬉しそうなのは、我が子の成長を喜ぶ方が大きいからか。
兄、恵が話すその横で、彼の子であり大助にとっての甥である紅葉は、パズルで遊んでいた。プラスチックの大きなピース同士を真剣に組み合わせて、絵を完成に近づけている。もう二歳、生まれたときに比べればずいぶん大きくなった。
「兄ちゃんと頼子さんのおかげで、頭良さそうだもんな。紅葉、お菓子食べるか?」
一歳になるかならないかの頃から、紅葉はどんどん言葉を吸収して使おうとするようになった。母である頼子が日頃から難しい単語ばかり発しているせいか、最近ではときどきこちらも意味を正しく覚えているかどうかわからないようなことを言う。
普段あまり言葉遣いがきれいではない大助も、紅葉に変な言葉を覚えられないよう、この子の前では少しだけ口調が丁寧になる。もし紅葉が乱暴なことを言えば、それは自分のせいだ。恵も頼子も穏やかな人なのだから。
「たべない。おわってない」
「終わってからじゃないと食べないのかよ」
「目の前のことをちゃんと片付けないと、気になるんだよ。頼子と同じだ」
「兄ちゃんともな」
笑っていると、何の話よー、と奥から声が聞こえてくる。先ほどから紅葉のお古を、頼子と亜子が漁っているのだった。そのあいだの子守は父親たちの仕事。今は眠っているが、大助もずっと自分の子供の大樹を抱いている。
もうじき生まれて半年、大樹は最近、あーだのうーだのと意味のない音をよく発している。本人にとっては意味があるのかもしれないが、大人にはそれがわからないので、適当に返事をしたり、こちらで勝手に意味づけをする。
「おわった。……だい、ねてる?」
パズルの絵――頼子のセンスなのか、現れたのは日本画風の猫だった――ができあがって、紅葉は満足したらしい。大助の横に来て、大樹の顔を覗き込んだ。
「大樹はまだ寝てるな」
「おきたら、むかしばなししてあげるのに」
大樹を弟分だと思っている紅葉の、最近のブーム。恵や頼子が話して聞かせ、もうすっかり覚えたという話を、大樹の傍で延々と唱える。相手が聞いていようといまいと関係なく、紅葉がそれをしたいのだ。まだおぼつかない口調で、両親の真似をしたいのだ。
「昔話か。新しい話してもらったか? おじさんに聞かせてみ」
「あたらしいの、ないよ。いっつもおんなじの。でもしてあげる」
おんなじの、という紅葉はちょっと拗ねているようだった。もっとたくさん、別の話が聞きたいのだろうが、かといって一般の幼児向けの話は、紅葉の好みじゃないという。この子が聞きたいのは、礼陣の伝承だ。頼子が収集した、この町の人間が語り継いできた話だ。――そのほとんど全てに、鬼が絡む。
「むかしむかし、さとになかのよいととさまとかかさまがすんでいた。かかさまの……」
そして伝承は、実際の出来事から派生したものが何種類かあって、微妙に違う複数の物語となっている。まとめればやはり同じ話ばかりになるだろう。
紅葉が覚えて話した、山で怪我をした男が鬼になって家に帰り、生まれたばかりの子供に会うという話。大助が知る限り、それも同じ設定でいくつも違う流れや結末がある。実際、大助が知っている話と紅葉が昔話として聞かされている話は内容が異なる。
男が大鬼様の力で鬼になる、というところは、大助が知る話では男の死が明確になっている。人間として死ななければ、鬼として復活することができない。また、男が鬼になるタイミングも違う。男は鬼になって山をおりるのではなく、魂だけ山をおりてから妻と子の姿を見て、この世に未練が残って鬼となる。
鬼が見える「鬼の子」だった大助が思うに、おそらくは自分の知っている話のほうが真実に近い。この町に住む「鬼」は、人間の未練と秘めていた力によって成るものだ。いわば強力だがほんの少し自由のきく地縛霊である。
頼子は礼陣の研究をして伝承を事細かに収集しているので、大助が知っているパターンも当然記録済みだろう。紅葉が聞かされている話は、数多いパターンの中でおそらく最もマイルドなものだ。死を省き愛を誇張した、幼い子供のための構成。あるいは、礼陣を奇異の目から避けるための。
「……いえをしあわせにしつづけたんだと。おしまい。おじさん、きいてた?」
「聞いてた。よく覚えたな。難しくないのか」
「ぜんぜん」
それでも紅葉なら、そのうちこの話一つをとっても数多くの派生があることに気がつくだろう。そこに暗い闇を見つけることになるだろう。この子は聡い。
「じゃあ、これは覚えたか? 里を治める殿様に仕えた、剣の達人の話。そいつは鬼と仲が良くてな」
「しらない! なに、おしえて」
「大助、ちゃんと整理して話してくれないと、あとで僕らがせがまれたときにできないからね。メモしないと……」
「どうせ頼子さん知ってるよ。大丈夫だって」
礼陣に関わることは鬼に関わること。紅葉も、そしてそのうち大樹も、この町の常識の中で生きていく。いつかはそれが一般の常識とは異なることに気づき、うまく折り合いをつけることになる。
頼子が伝承をマイルドにして聞かせるのは、常識の差異を曖昧にするためでもあるかもしれない。そういうことにはよく気がつく人だから。
でもいつかは、自分で。礼陣の持つ物語と、この子らも付き合うことになる。物事を読み取るのは自らで、解釈し受け入れるのも自らなのだ。



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posted by 外都ユウマ at 11:06| Comment(0) | 創作文章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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